「食事をすること」は、生き物として、人間として、一番大切なこと。
そして、その食事というものの価値を高めることは、ひとびとの人生の価値や満足度を上げることに直結していると思います。
イタリア人と仕事をしていて、見習いたいと思うことの一つは、食事を特別なものとして楽しむという文化や美意識。さすがは美食の楽園として知られた古代ローマの末裔というか、マンジャーレ・カンターレ・アマーレの国というか、家庭での食卓からレストランでの食事まで、イタリア人にとって食事をすることとは、食物を摂取することではないのだな、と、ひしひしと感じます。
イタリアの食楽に欠かせないのは、「食べる場所」「食べさせてくれる人」「食べるもの」の三要素。
たとえばのスパゲティを食べるのだとしても、 「ナポリの海の見えるテラスで」「日に焼けた肌の漁師風のオーナーに勧められて」「地元産のトマトソース」を食べることと、 「ミラノの高級レストランで」「白いジャケットに蝶ネクタイのベテランウェイターの給仕で」「ハーブの利いたラヴィオリ」を食べるのでは、全く違った意味があり、まったく違った楽しみがある。
まあ、そういう楽しみがあるということは誰にでもわかるのですが、そこにきっちりこだわる。
別に、お洒落な伊達男や流行感度の高い美女に限った話ではなく、マイホームパパから若いサラリーマンまで、だれもがそういう「食楽体験」「美食体験」をきちんと認識し、それを味わうだけの素養がある。これこそが食文化であり、食べることに対する美意識だな、と思うのです。
そして、特にレストランでの食事は「そのチャンス限りの即興の舞台、主人公はもちろん自分」。
だからイタリア人の食事はいつもドラマチックで、美しくて、お金と時間を使う価値があるものになる。
人生において、食事、しかもレストランでの外食ができる回数はそう多くありません。
安さだけを追求したり、あるいはマニュアル的流れ作業の中で外食をするのでは味わえない、一生で一度だけの、今日の食事を大切にするという美意識。
そんな美しい食事を積み重ねた人生は、そうでない人生よりも数段楽しく、色濃いものになるでしょう。
そんなイタリア式食事の文化を、ブオンリコルド イタリア食文化普及協会をとおして日本の皆さまにお届けできるよう、全力を尽くしたいと思っております。
この出会いを通して、食事が、あるいは人生が、少しだけでもより美しく楽しいものになりますように!
Buon Apetito!!
日本ブオンリコルド協会
代表理事
冥賀弥生